#タイトル:ネリーザSS「崖の上にて」 #作者:シーラカンス(coelacanth.web@gmail.com) !文字列操作 , ${文字列:シーラカンス/SSタイトル} , = , 崖の上にて #■■■ ここから、SS用初期設定 ■■■ #■■■ ここで保護司のキャラクター設定 ■■■ !基本情報変更,人物 キャラ名 , シーナの母 表示名 , 保護司 顔合成設定 , オン 顔カラー指定, 髪 ,14 顔カラー指定, 目 ,3 顔カラー指定, 肌 ,0 顔服装指定 , 私服 , Graphic\FaceParts\服装/女_ワイシャツ.png , 3 , Graphic\FaceParts\服装/女_ジャケット.png , 3 顔パーツ指定, ベース ,Graphic\FaceParts\ベース/女性_中年.png 顔パーツ指定, 目 ,Graphic\FaceParts\目/3_優し目2.png 顔パーツ指定, まゆ ,Graphic\FaceParts\まゆ/1_やさしい.png 顔パーツ指定, 口 ,Graphic\FaceParts\口/1_無表情.png 顔パーツ指定, 髪前面 ,Graphic\FaceParts\髪_前面/3_モッサリ.png 顔パーツ指定, 髪前面+ , 顔パーツ指定, 髪背面 ,Graphic\FaceParts\髪_背面/3_ウェーブ1.png 顔パーツ指定, 追加 , 顔パーツ指定, 手 , 表情パーツ指定, 笑顔 , 目 ,Graphic\FaceParts\目/3_優し目3.png 表情パーツ指定, 笑顔 , まゆ ,Graphic\FaceParts\まゆ/1_やさしい2.png 表情パーツ指定, 笑顔 , 口 ,Graphic\FaceParts\口/1_微笑み.png 表情パーツ指定, 笑顔 , 追加 , 表情パーツ指定, 笑顔 , 手 , 表情パーツ指定, 困る , 目 ,Graphic\FaceParts\目/3_優し目2.png 表情パーツ指定, 困る , まゆ ,Graphic\FaceParts\まゆ/1_しょんぼり1.png 表情パーツ指定, 困る , 口 ,Graphic\FaceParts\口/2_口開け.png 表情パーツ指定, 困る , 追加 , 表情パーツ指定, 困る , 手 ,Graphic\FaceParts\手/女_左手握り.png 表情パーツ指定, ガーン , 目 ,Graphic\FaceParts\目/2_驚き目.png 表情パーツ指定, ガーン , まゆ ,Graphic\FaceParts\まゆ/1_やさしい.png 表情パーツ指定, ガーン , 口 ,Graphic\FaceParts\口/3_口開け.png 表情パーツ指定, ガーン , 追加 ,Graphic\FaceParts\追加/ガーン.png 表情パーツ指定, ガーン , 手 , 表情パーツ指定, 怒り , 目 ,Graphic\FaceParts\目/3_優し目3.png 表情パーツ指定, 怒り , まゆ ,Graphic\FaceParts\まゆ/1_少りりしい.png 表情パーツ指定, 怒り , 口 ,Graphic\FaceParts\口/1_無表情.png 表情パーツ指定, 怒り , 追加 , 表情パーツ指定, 怒り , 手 , 表情パーツ指定, 照れ , 目 ,Graphic\FaceParts\目/3_優し目2.png 表情パーツ指定, 照れ , まゆ ,Graphic\FaceParts\まゆ/1_やさしい.png 表情パーツ指定, 照れ , 口 ,Graphic\FaceParts\口/2_笑い.png 表情パーツ指定, 照れ , 追加 ,Graphic\FaceParts\追加/ほほ染め.png 表情パーツ指定, 照れ , 手 ,Graphic\FaceParts\手/女_左手握り.png 表情パーツ指定, 驚く , 目 ,Graphic\FaceParts\目/3_優し目2.png 表情パーツ指定, 驚く , まゆ ,Graphic\FaceParts\まゆ/1_やさしい.png 表情パーツ指定, 驚く , 口 ,Graphic\FaceParts\口/2_口開け.png 表情パーツ指定, 驚く , 追加 ,Graphic\FaceParts\追加/汗1.png 表情パーツ指定, 驚く , 手 , 表情パーツ指定, 特1 , 目 ,Graphic\FaceParts\目/1_細目3.png 表情パーツ指定, 特1 , まゆ ,Graphic\FaceParts\まゆ/1_やさしい.png 表情パーツ指定, 特1 , 口 ,Graphic\FaceParts\口/3_笑い.png 表情パーツ指定, 特1 , 追加 , 表情パーツ指定, 特1 , 手 ,Graphic\FaceParts\手/女_左手握り.png 表情パーツ指定, 特2 , 目 ,Graphic\FaceParts\目/3_優し目2.png 表情パーツ指定, 特2 , まゆ ,Graphic\FaceParts\まゆ/1_やさしい.png 表情パーツ指定, 特2 , 口 ,Graphic\FaceParts\口/1_無表情.png 表情パーツ指定, 特2 , 追加 , 表情パーツ指定, 特2 , 手 , 表情パーツ指定, 特3 , 目 ,Graphic\FaceParts\目/3_優し目2.png 表情パーツ指定, 特3 , まゆ ,Graphic\FaceParts\まゆ/1_やさしい.png 表情パーツ指定, 特3 , 口 ,Graphic\FaceParts\口/1_無表情.png 表情パーツ指定, 特3 , 追加 , 表情パーツ指定, 特3 , 手 , #■■■ ここで一人称・主人公の呼び方をセット ■■■ !文字列操作 , ${シーナの母:一人称} , = , 私 !文字列操作 , ${ネリーザ:一人称} , = , あたし !文字列操作 , ${学院長:一人称} , = , 私 #■■■ 初期服装・場所・BGM設定 ■■■ !移動 , 崖 , !BGM , エンド2 !ウェイト , 30 #■■■ テストプレイ用設定 ■■■ !条件分岐 , ${システム:テストプレイ中?} , 0 , 以外 !ジャンプ , test2 !条件終了 #■■■ ここまで、SS用初期設定 ■■■ !ラベル , test2 #■■■ ネリーザ・保護司と登場 ■■■ @ネリーザ ふう……。 @ネリーザ ここら辺だったかな……。 @なし あれから、 とても長い時間が過ぎ去った。 @シーナの母 ここなのね……。 @ネリーザ はい。ここです。 @ネリーザ \meが、出てこられたら…… もう一度来てみたいと 思っていた場所なんです。 #■■■ タイトル表示 ■■■ !移動 , なし , @なし 「${文字列:シーラカンス/SSタイトル}」 !移動 , 崖 , @ネリーザ@笑顔 ここで\me、捕まる前に、 飛び降りようとしたんです。 @シーナの母@困る ……。 @ネリーザ@笑顔 あ、大丈夫ですよ。 今更、そんなことはしないから。 @シーナの母@笑顔 もう、頼むわよ。 本当は、こういうところに 連れてくるべきじゃ無いんだから。 !基本情報変更,人物 キャラ名 , シーナの母 表示名 , なし @シーナの母@笑顔 ←この人は、  ${ネリーザ:一人称}を担当する保護司さん。 @シーナの母@笑顔 ←保護司というのは、  犯罪や非行を犯した人間の更生を  手伝ってくれる、  ボランティアの人らしい。 !基本情報変更,人物 キャラ名 , シーナの母 表示名 , 保護司 @ネリーザ@笑顔 迷惑はかけないわ。 おばさんのお陰で、 ここに来れたんだから……。 @シーナの母@笑顔 今回は特別なのよ。 ここは、あなたにとって、 大事な……意味のある場所だと思ったから。 @ネリーザ@笑顔 意味……。 \meの「更生」に役立つから ……ですか? @シーナの母@笑顔 どうかしら? #■■■ 回想・服役と脱獄 ■■■ !ウェイト , 30 !BGM , !移動 , 拘置所 , !ウェイト , 20 @なし ${ネリーザ:一人称}はずっと、 この島の拘置所で、刑に服していた。 @なし 若いころやっていた、 \r[自殺代行業,じさつだいこうぎょう]…… 自殺の「手伝い」をした罪だった。 !BGM , 危機 @なし 受刑者に対しては、 定期的に\r[教誨,きょうかい]が行われる。 ……まあ、道徳や宗教の話を聞く時間だ。 @なし 「命は大事だ」「周りの人が悲しむ」 「親に感謝」「自分を大切に」云々。 @なし 大人しく聞いてはいたが、 ${ネリーザ:一人称}は心の中で全く馬鹿にしていた。 @なし ${ネリーザ:一人称}の育った地区では、 命は粗末なもの、悲しむ周りも親も居らず、 自分は虐げられる存在だった。 @なし 命は、大したものじゃない。 人生など、無価値としか思えない。 @なし 死にたいと思う奴が死ぬことに、 なんの問題もないと思った。 @なし ${ネリーザ:一人称}は、 本人の望み通りにしただけだ。 @なし 納得できない道徳の時間を、 ${ネリーザ:一人称}は表向きだけ 聞いている態度を取っていた。 !移動 , なし , @なし そんな日々を過ごしていた、ある日。 房の中に、金髪の女が入ってきた。 @なし カギがかかっているはずなのに、 瞬間移動のように、突然現れたのだ。 @なし 「3ヶ月後に逃亡させるので  それまで潜伏していろ」 @なし そう言って、 その女は${ネリーザ:一人称}を逃がした。 !移動 , 高級マンション , @なし でも結局、 約束の期間が過ぎる前に、 公安に潜伏先がバレて……。 #■■■ 崖から飛び降りたとき ■■■ !BGM , 風 !移動 , 崖 , @ネリーザ \meは、 ここに追い詰められました。 @シーナの母 ……。 @ネリーザ そして、 そこの崖から 飛び降りようとしたんです。 @ネリーザ \meのやったことは、 他の殺人と違う。 死にたいという希望を叶えただけ。 @ネリーザ 命なんて、 大したものじゃないんですよ。 @ネリーザ もちろん\meも 生きてる意味ないから…… 死ぬことに、迷いはありませんでした。 @シーナの母 ……。 @ネリーザ それで、飛び降りようとした時……。 !BGM , 悲しげ1 @ネリーザ@困る 助けてくれた人が居たんです。 @ネリーザ@困る 公安委員の人でした。 全力で走ってきて、 \meの手をつかんで……。 @ネリーザ@困る \meはその時、 理解できませんでした。 @ネリーザ@困る \meは犯罪者でしか無くて、 どうでもいい存在のはずなのに。 @ネリーザ@笑顔 なんで、 助けたんですかね。 @ネリーザ@笑顔 \meみたいな犯罪者を生かしたって、 税金の無駄ですよね? @ネリーザ 死ぬつもりだったのに……。 なんで……。 @シーナの母 その人にとっては……。 @シーナの母 他の人の人生は、 無価値じゃなかったんでしょうね。 @ネリーザ ……。 @ネリーザ おかしいですよ……。 @ネリーザ \meを生かしたら、 また、「仕事」するかも 知れない……。 @ネリーザ そんな\meを……。 @シーナの母 それからのあなたは、 \r[教誨,きょうかい]の時間、 とても……辛そうだったと聞いているわ。 @ネリーザ@困る 始めは馬鹿にしてたんだけど…… 分からなくなったんです……。 @ネリーザ@困る 「死にたい奴は死ねば良い」 簡単なことだったはずなのに……。 @ネリーザ \me……助けられて……。 こうして、生きてるってのが……。 @ネリーザ ……。 @シーナの母 ……。 @なし おばさんは、 ${ネリーザ:一人称}に何も言わなかった。 @なし いつもは陽気な人だったが、 こういうときは、 反論せずに聞いてくれた。 @ネリーザ それで、その公安委員の人に、 もう一度会いたかったんだけど……。 @シーナの母 その人には、 会えなかったのよね。 @ネリーザ はい。無理もないですよね。 ずいぶんと前のことだし。 @ネリーザ \me、その人の名前も 知らないんですから。 #■■■ 回想・再び塀の中 ■■■ !ウェイト , 30 !移動 , 拘置所 , !ウェイト , 20 @なし 脱獄の罪を重ねて、 ${ネリーザ:一人称}の刑期は延びた。 @なし ${ネリーザ:一人称}は若いころを、 ほとんど塀の中で過ごすことに なってしまったのだ。 @なし でも、それよりも${ネリーザ:一人称}を \r[苛,さいな]んだのは……。 @なし ${ネリーザ:一人称}を助けるために、 全力で伸ばしてくれた、 あの「手」だった。 @なし \r[教誨,きょうかい]の時間の 「命は大事だ」という教えを、 冷静に聞けなくなった。 !移動 , なし , @なし いや、あいつが馬鹿なんだ。 特別、馬鹿なだけなんだ。 @なし あれは例外だったんだ。 普通の人は、他人の命なんて、 どうってことないはずなんだ。 @なし ${ネリーザ:一人称}は生きている……。 でも……${ネリーザ:一人称}が 「手助け」した奴は……。 #■■■ 葛藤 ■■■ !BGM , 風 !移動 , 崖 , @ネリーザ ……。 @シーナの母 ……ネリーザさん? @ネリーザ \meは、いまでも 自分が間違っているとは 思いません。 @ネリーザ 自分が死にたいと思ったら、 死ねばいいんです。 @ネリーザ ……。 @シーナの母 ……。 @なし 今だけ、 この人が黙って聞いてくれることが、 少し疎ましく感じた。 @なし しゃべればしゃべるほど、 自分がおかしくなってくる 気がする……。 @ネリーザ ……。 @シーナの母 ……。 #■■■ おじさん登場 ■■■ !ウェイト , 30 @なし ――ふと、人の気配がしたので、 目線の向きを変えた。 !ウェイト , 30 !BGM , 意識の海 !基本情報変更,人物 キャラ名 , 学院長 表示名 , ? @学院長 ……。 !ウェイト , 30 @学院長@笑顔 おや、すまない。 邪魔してしまったかな。 @ネリーザ あ、いや……。 @なし さっきまでは、居なかったのに。 まるで、急に現れたような……。 @シーナの母 あの……。 @シーナの母@笑顔 もしかして、 シルフェイド学院の……。 @学院長@笑顔 いや。似ているが、別人だ。 学院長だったら、今の時間、 学院に居るはずだろう? @なし 確かに、この時間、こんな所に シルフェイド学院の 学院長が居るはずは無い。 @なし 学院は、シルフェイド島で 大きな地位を占めている。 @なし そこの学院長が、 こんなところで散歩している暇は 無いはずだ。 @なし そもそも、学院長は確か、 もっと年をとってた気がする。 @なし 学院長の顔は、インターネットの記事や 新聞を読んでいれば、 誰でも知っていた。 @なし このおじさんは、 本物の学院長よりも、 いくらか若く見える。 !基本情報変更,人物 キャラ名 , 学院長 表示名 , おじさん @学院長@笑顔 たまにこうして、 海を見に来るのだよ。 @学院長@笑顔 ここは良い場所だからな。 @ネリーザ ……。 @なし 追い詰められた時は 余裕が無かったから、 感じなかったけど……。 @なし 確かに、 ここは心地の良い場所だった。 @なし さえぎる物のない海の彼方から、 まっすぐな風が、 潮の匂いを運んでくる。 @なし そして、${ネリーザ:一人称}の体にぶつかった後、 留まることなく、 島の方へ吹き抜けてゆく。 @ネリーザ@笑顔 確かに、良い場所ね……。 @シーナの母@笑顔 そうねぇ……。 #■■■ おじさんの罪 ■■■ @学院長@笑顔 ……\meも、同じなのだ。 @ネリーザ@驚く ……え? 何が? @学院長 \meも、自分の罪を見つめるために、 ここに来ている。 @ネリーザ ……聞いてたんだ。 \meたちの話。 @学院長@笑顔 すまない。 耳が良いものでな。 @ネリーザ@笑顔 ……それで、 おじさんはどんな悪いことしたの? @学院長 説明するのは難しいのだが…… とても大きな罪だ。 @ネリーザ 人を殺した? @学院長 それも含む。 結局、失敗したが。 @ネリーザ じゃあ、おじさんも、 しばらく入ってたんだ。 @学院長 いや……。 \meの罪は、誰にも裁かれず、 誰からも罰せられていない。 @シーナの母 ……! @ネリーザ@驚く へえ、完全犯罪ってやつ? @ネリーザ@笑顔 ……あ、 でも失敗してるんだっけ。 @学院長 そうだ。 失敗して、結局全ては元に戻った。 @ネリーザ じゃあ、良かったじゃん。 @学院長 良かった。 だが、\meの罪は消えない。 多くの人を巻き込んでしまった。 @ネリーザ@困る ……うーん、良く分からないな。 結局、おじさんは何をしたの? @シーナの母 ……。 @ネリーザ (\meには、  おばさんみたいに黙って聞くなんて、  出来そうにないなあ) @学院長 ……しいて言えば、無理心中かな。 規模の大きな。 @ネリーザ 周りの人を殺して、 自分も死のうとしたってこと? @学院長 結果的にそうなるところだった。 だが、ギリギリのところで ある人に止められた。 @ネリーザ ……。 @なし ふいに、 ${ネリーザ:一人称}を崖に繋ぎとめてくれた、 あの時の「手」のことを思い出した。 @学院長 その人が居なかったら、 取り返しのつかない事になっていた。 @ネリーザ ま、死にたい奴が死ぬのはともかく、 無理に巻き込むのは、良くないよね。 @学院長 その時の\meにとっては、 一か八か、皆を救う手段だったのだ。 @学院長 結局、間違ったやり方だったがな。 @学院長 もう少しで、たくさんの命が 犠牲になるところだった……。 #■■■ 自殺について ■■■ !BGM , 風 @ネリーザ (命……) @なし \r[教誨,きょうかい]の時間に 何度も聞いた、 「命は大事だ」ということ。 @なし ${ネリーザ:一人称}は、ふと、 このおじさんに 聞いてみたくなった。 !BGM , エンド2 @ネリーザ おじさん……。 @学院長 何かな? @ネリーザ その命を、 自分の意思で捨てるのは、 悪いことかな? @シーナの母 ……。 @学院長 なぜ、自殺は悪なのか……か。 @学院長 「周りが悲しむから」という理由づけは、 何度か聞いているかな? @ネリーザ@笑顔 ええ。あと、 「天国に行けないから」とかね。 @ネリーザ \meには、悲しむ「親」も「周り」も 居なかったし、 天国も信じられない。 @ネリーザ そんな\meが、自殺を止められて、 こうして生きてる……。 おじさん、さっき聞いてたでしょ? @学院長 ああ。 @ネリーザ それから、分からなくて。 ずっと考えてるんだけど。 @学院長 自殺が悪とされるのは…… そうでないと、社会が困るからだ。 @ネリーザ ……え? @学院長 例えば、自殺志望の人間が、 他人を巻き添えにしようと企んだとする。 @学院長 銃を乱射して十数人を殺し、 自分も望みどおり死んだとする。 @学院長 \meたちは、 この犯人を罰することが出来ない。 望み通り、死んでいるのだから。 @ネリーザ まあね……。 @学院長 あるいは、線路に飛び込む、 毒ガスを発生させて 近所の人を巻き込む……。 @学院長 周りを巻き添えにした罪を、 自殺者は決して負う事がない。 @学院長 ……極刑を持ってしても、不可能だ。 既に、死んでいるのだから。 @学院長 せいぜい、家族に補償を請求するとか ……その場合も、 本人を罰したことにはならない。 @学院長 自殺をする人間に対しては、 社会の大事なルールの一つ…… 刑罰が成り立たないのだ。 @ネリーザ@笑顔 そんな過激な奴は一部でしょ……。 死のうって奴は、 もっと静かに死ぬよ、普通。 @学院長 例えば「仕事が辛い」「借金が辛い」 「人間関係が辛い」「病気が辛い」…… 人にはいろいろな悩みがある。 @学院長 その時、自殺に対して 何のハードルもなかったら、 どうなる? @ネリーザ まあ、バンバン死んでくんじゃない? @シーナの母@困る ……。 @なし おばさんが、あからさまに 顔をしかめる。 @学院長 つまり、社会活動が滞る。 社会が止まってしまうのだ。 @学院長 仕事も勉強も…… 社会は、人の活動を「生きる」ためのものに 向けさせようとする。 @学院長 そうでないと、 \meたちの生活は維持できない。 人間としての暮らしは、保てないだろう。 @学院長 「命は大事だ」という価値基準が揺らぐと、 社会は持続せず、 \meたちは共倒れになる。 @学院長 社会のあらゆる価値基準、活動、刑罰は、 「命は大事だ」という原則の上に 成り立っているのだ。 @学院長 自殺や殺人を容認することは、 その大前提を覆すことになる。 @学院長 「命は大事だ」と考えない人が 大きな力を持った時、 我々の社会は崩壊してしまうのだ。 @シーナの母 ……でも。 @なし 珍しく、おばさんが反論する。 @シーナの母@笑顔 命よりも大切なものも、 あるんじゃないかしら。 @シーナの母@笑顔 例えば、自分の子供のために、 命を捨てるという人が居ても、 \meは理解できるわ。 @学院長 それは、やはり「命が大事だ」という 考えに沿っている。 @学院長@笑顔 子供の命を守るために 自分を犠牲にするのは、 子供の「命が大事だ」からだ。 @シーナの母@笑顔 ……確かに、そうね。 @学院長@笑顔 命を犠牲にすることが理解されるとしたら、 それは何か別の存在を 守るためであるときだ。 @ネリーザ つまり、自殺をするなというのは、 社会のため、なんだ。 @学院長 「周りが悲しむから」という理由づけは、 その一面を表しているな。 「周り」が即ち「社会」というわけだ。 #■■■ 放棄の矛盾 ■■■ !BGM , @ネリーザ ふうん……そっか。 @ネリーザ@笑顔 ありがとう……。 !BGM , 風 @ネリーザ@笑顔 そこまでストレートに 「社会のため」と言ってくれて…… おかげで問題がクリアになったよ。 @ネリーザ@怒り ずっと引っかかってたんだ。 \meには、悲しむ「周り」なんか 居なかった。 @ネリーザ@怒り 命を大事にすることが、 社会の前提なら……。 @ネリーザ@怒り どうして、 \c[1]放棄地区\c[0]が存在するのよ。 @ネリーザ@笑顔 \meは、放棄地区で育ったからね。 あそこにいたら、人の命が大事だなんて、 到底、思えないよ。 @ネリーザ 放棄地区だけじゃない……。 どんな集団にだって、 仲間はずれ、いじめ……排斥は起こりうる。 @ネリーザ@怒り 排斥された奴の立場は? 社会から追い出されて、 どうして前提を守る必要があるの? @ネリーザ@怒り 死にたいと思ったら、 今度は死ぬなと言ってくる。 「放棄」してたんじゃないの!? @ネリーザ@笑顔 命は大事だ? 人生は価値がある? @ネリーザ@怒り そんなの矛盾した、 胡散臭い押し付けなのよ! @なし 気が付いたら、 久しぶりに大声を出していた。 @なし 潮風が、ふいに 鼻をツンと刺激する。 @なし おばさんが体を支えてくれる。 いや、飛びかからないように、 押さえてくれてるのか……。 #■■■ おじさんの理想 ■■■ @学院長 ……。 @学院長 「放棄地区」か……。 !BGM , 切ない @学院長 \meは、昔、 教師をしていてね……。 @学院長 その時の\meの方針は、 どんな若者も、全て受け入れることだった。 放棄地区の者も例外なく。 @学院長 世間で不良と呼ばれる学生も、 全て受け入れた。 @学院長@笑顔 武術運動部や公安委員会の一部が 過激な行動に出たり……。 いろいろ、頭の痛い問題はあったがな。 @学院長 それでも……。 \meはどんな素姓の知れぬ学生も受け入れて、 教育する方針を通した……。 @ネリーザ ……そりゃあ、りっぱね。 @学院長 社会は、一方では排斥をするくせに、 「命は大事だ」という原則を守らないと、 潰れてしまう……。 @学院長 君の言う事は正しい。 矛盾しているのだ。 @学院長@笑顔 \meはその矛盾に、 微力でも抗いたかった……。 @学院長@笑顔 ……本当に、微力だったがな。 @ネリーザ ……。 @なし おじさんの笑顔は、 弱々しくて、寂しげだった。 @なし ……どうしてこの人が、 周りの人を巻き込んで 死ぬような事態を起こすのか……。 @なし 話せば話すほど、 分からなかった。 #■■■ ネリーザの罪 ■■■ !ウェイト , 20 @学院長 君は、放棄地区出身と 言っていたね。 @ネリーザ ……ええ。 @学院長 放棄地区の問題は、 いつ解決するのか…… おそらく長い時間がかかるだろう。 @学院長 しかし、君がここに立っているという事は、 少なくとも君は、 放棄されずにいるということだ。 @ネリーザ ……。 @なし おばさんの方を見る。 @シーナの母@笑顔 ……。 @なし おばさんは、 黙ってうなずいてくれた。 @なし そしてあの日、 ${ネリーザ:一人称}を\r[掴,つか]んでくれた「手」……。 @なし 今、${ネリーザ:一人称}が ここに居るのは……。 @学院長@笑顔 放棄されていない以上、 君は、社会の一員だ。 @学院長@笑顔 命を大事に、 守らなければいかんな。 @ネリーザ@困る ……。 @なし 誰からも 手を差し伸べられることの無かった、 子供の頃の${ネリーザ:一人称}。 @なし そして、 「希望通り」死んでいった人たちを 思い出す……。 @なし ${ネリーザ:一人称}が殺した人たち。 死を願った人たち。 @なし 恐怖という、 最後のハードルに 震えていた人たち。 @なし ${ネリーザ:一人称}は、 崖に立っている人に 手を差し出すどころか……。 @なし その背中を ためらいもなく押したのだ。 @シーナの母 ……ネリーザさん。 @なし おばさんが ${ネリーザ:一人称}を抱きしめてくれた。 @なし しばらく、そうしていた。 @なし そうしていないと、 ${ネリーザ:一人称}は崩れそうだった。 !エフェクト , フェードイン白 , 120 !ウェイト , 30 !BGM , エンド2 !ウェイト , 30 !エフェクト , フェードアウト , 120 @シーナの母@笑顔 ……落ち着いた? @ネリーザ@困る はい、すみません……。 @なし いつの間にか、 おじさんは消えていた。 @なし もしかしたら、 あの金髪の女と同じように、 瞬間移動でも出来るのだろうか。 @なし いや、 ${ネリーザ:一人称}が気付かなかっただけか……。 #■■■ 保護司の娘 ■■■ @シーナの母 ……実はね、ここ、 \meも何度か 来たことがあるのよ。 @ネリーザ そうなんですか……。 @シーナの母@笑顔 \meの娘が、 この場所を気に入っててね……。 @シーナの母@笑顔 娘が生きてる頃は、 たまに病院からここまで散歩したわ。 ……もう、だいぶ前のことだけどね。 @ネリーザ@困る え……。 @シーナの母 お医者さんから言われた 娘の余命が、 あと半年くらいになった時にね……。 @シーナの母 うちの娘と同じくらいの年の子が、 病院に住むことになったの。 @ネリーザ@困る ……。 @シーナの母@笑顔 とても仲良くしてくれてね。 娘は、喜んでたわ。 @シーナの母@笑顔 入院してから、同じくらいの年の友達が なかなか出来なかったからね。 @シーナの母@笑顔 亡くなる二日前にも…… うちの娘はここに来て、 海を見ていたのよ。 @シーナの母@笑顔 その子と一緒に。 @ネリーザ ……。 @シーナの母@笑顔 その子のおかげなんでしょうね…… お医者さんから言われた時間より、 娘は半年も長く生きてくれた。 @シーナの母@笑顔 娘の安らかな顔をみて、 \me、思ったの。 @シーナの母@笑顔 人の\c[1]絆\c[0]って…… 生きる力になるんだなあって。 @ネリーザ@驚く 絆……。 @なし ${ネリーザ:一人称}が殺した人たちも、 人との絆があったら……。 @なし 生きたいと、思ったんだろうか。 @なし ${ネリーザ:一人称}も、 人生に何かの価値を 見つけていたんだろうか。 #■■■ オルゴールと約束 ■■■ !BGM , @シーナの母 ほら、これ……。 @ネリーザ オルゴール……ですか? !BGM , オルゴール @シーナの母@笑顔 その、友達になってくれた子ね、 娘にオルゴールを贈ってくれたの……。 @シーナの母@笑顔 すごく喜んでたわ……。 娘は、天に召される時も、 そのオルゴールを抱いていたの。 @シーナの母@笑顔 これは、 それと同じ曲のオルゴールなのよ。 @ネリーザ そう、ですか……。 @なし オルゴールは 風の音に負けずに、 優しく響いていた。 @なし メロディは海風に乗って、 街の方へ流れてゆく……。 @ネリーザ@笑顔 きれいですね……。 @シーナの母@笑顔 これ、あなたにあげる。 @ネリーザ@驚く え!? な、なんで? 大事なものじゃないの? @シーナの母@笑顔 これは、あなたに 買ってきたものだから。 @シーナの母@笑顔 受け取って。 それで…… たまに、聞いてみて。 @ネリーザ@困る いや、でも……。 !ウェイト , 20 !BGM , @シーナの母@特1 では! あなたの更生のために、 二つ、約束してもらうわ。 @なし おばさんは、急に保護司としての 仕事ぶりを前面に出してきた。 その口調は、どこか、おどけている。 !BGM , エンド3 @シーナの母@笑顔 一つ目は、 「命を大事にすること」 @なし おじさんの言ってくれたこと。 @シーナの母@笑顔 二つ目は、 「絆を大事にすること」 @なし おばさんの言ってくれたこと。 @シーナの母@笑顔 以上です。 @ネリーザ ……約束事としては抽象的で、 なんか分かりにくいんですけど。 @シーナの母@笑顔 生活や就職の上での約束事は、 もう聞いてるでしょ? @シーナの母@笑顔 それとは別に、 時間をかけて考えてみて。 @ネリーザ ……。 @なし よく、分からない。 @なし でも、 ${ネリーザ:一人称}が今、ここに居るのは……。 @なし ${ネリーザ:一人称}を見捨てずに 繋ぎとめてくれる人が居たから。 @なし それは、確かなようだった。 @なし ……${ネリーザ:一人称}はこれから、 どうしていけば良いんだろうか? @なし もう、取り返しのつかない事を してしまった、${ネリーザ:一人称}は……。 @ネリーザ ……。 @なし あのおじさんは、 どこで、 どんなふうに生きているんだろうか? @なし 今もどこかで、罪を悔いたり、 償ったりしているんだろうか。 @ネリーザ@困る ……。 @なし おばさんの娘さんは、 死ぬ前の時間を、 どんなふうに生きていたんだろうか? @なし 余命わずかと知った後、 人生に、どんな価値を見て 生きていたんだろうか。 @シーナの母@笑顔 ……。 @なし おばさんは、 今まで、 どんなふうに生きてきたんだろうか? @なし 娘さんを亡くしてから、どのようにして、 保護司のボランティアをするように なったんだろうか……。 @シーナの母@笑顔 ……じゃあ、 そろそろ行きましょうか。 @ネリーザ あ、はい。 @なし 受け取ったオルゴールの ふたを、そっと閉じる。 @なし 崖の上から、もう一度海を見ると、 見渡す限り、遠くまで広がっている。 @なし 日が少し傾いたせいか、 風は弱くなっていた。 @なし ${ネリーザ:一人称}の体を やさしく押してくれる、 海からの風。 @なし ${ネリーザ:一人称}は おばさんの方へ振り返り、 街に向かって歩き出した。 !エフェクト , フェードイン黒 , 120